麒麟の翼

『麒麟の翼』

『麒麟の翼』は、東野圭吾の推理小説を原作として映画化され、2012年1月28日公開された「加賀恭一郎シリーズ」第9作の映画です。配給は東宝。同シリーズが原作で2010年に放送された連続ドラマ「新参者」、11年の単発ドラマ「赤い指」に続き、阿部寛が主人公の刑事・加賀恭一郎を演じています。ドラマ版から続投の溝端淳平、黒木メイサらに加え、事件の真相に深くかかわる香織役で新垣結衣が共演。監督は「涙そうそう」「ハナミズキ」の土井裕泰。2010年4月期に放送された連続ドラマの日曜劇場『新参者』、ならびに2011年1月に放送されたスペシャルドラマ『東野圭吾ミステリー 新春ドラマ特別企画 赤い指「新参者」加賀恭一郎再び!』の続編です。全国377スクリーンで公開され、2012年1月28、29日の初日2日間で興収2億7,640万8,100円、動員21万7,183人になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第2位となりました。

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『麒麟の翼』ストーリー

東京・日本橋の翼のある麒麟像にもたれかかるようにして死んでいた男の捜査に当たる加賀だったが、容疑者の八島が逃亡中に車にはねられ意識不明に。八島の恋人・香織は涙ながらに無実を訴えるが……。被害者はカネセキ金属の製造本部長、青柳武明(中井貴一)。彼は、腹部を刺されたまま8分間も歩き続けた後に、日本橋の翼のある麒麟像の下で力尽きていた。なぜ、誰の助けも求めず、彼は一体どこへ向かおうとしていたのか。一方、事件の容疑者、八島冬樹(三浦貴大)は現場から逃亡しようとしたところを車に轢かれて意識不明の重体だった。報せを聞いた八島の恋人、中原香織(新垣結衣)は、彼の無実を訴えるが……。この難事件の捜査に当たるのは、日本橋署の切れ者刑事、加賀恭一郎(阿部寛)。やがて捜査が進むにつれて、それぞれの家族や恋人の知られざる一面が明らかになってゆく。命が終わるその時に、青柳は誰に何を伝えようとしていたのか?愛する人に何を残そうとしたのか?加賀は事件の裏に隠された謎を解き明かし、真実を見つけ出すことができるのか……?

『麒麟の翼』解説

「麒麟の翼」の主人公・加賀恭一郎と松宮周平。連続ドラマ、スペシャルドラマに続く、直木賞作家・東野圭吾氏のベストセラー・シリーズ最新作の映画化ですが、演じた阿部寛と溝端淳平はそれぞれのキャラクター、2人のコンビネーションに無限の可能性を見いだしています。緊張感あふれるミステリーの世界の軸になりつつ、時にはホッとする笑いをかもし出しています。2人の掛け合いも硬軟自在のテンポで、話は次回作以降への夢へと膨らんでいきました。阿部が後輩に向ける期待と、溝端の先輩に対する敬愛の念。このふたつが絡み合い化学反応を起こすことで、加賀と松宮は共に成長を続けてきた、この加賀を主人公とするシリーズの第8作を連続ドラマ化した「新参者」が2010年4~7月に放送され、平均15.2%の高視聴率を獲得。昨年1月には第7作「赤い指」がスペシャルドラマとしてオンエアされ、再び15.4%を記録しました。連続ドラマのころから雑談レベルで映画にしたい旨の話はしていたそうですが、それが第9作「麒麟の翼」で実現しました。

『麒麟の翼』の原作と映画の相違点

原作と映画の描き方の相違点についてちょっと考えてみました。

(1)予告編の日時
予告編では、「麒麟の翼」像の前で青柳武明(中井貴一)の刺殺死体が日本橋交番の巡査に発見される日時が、「6月13日・午後8時58分」と明示されています。これに対して、原作では最初から最後まで日にちはまったく書かれていません。最初の一行は、「その男が日本橋交番の脇を通過したのは、間もなく午後九時になろうかという頃だった。」で始まり、映画での時間と一致しているだけです。季節感を示す表現は、小説の後半、青柳悠人が中学時代の水泳部仲間である黒沢の家を訪問する場面の節が、「夕方になって、急に冷え込んできたようだ。吐く息が少し白い。本格的な冬は、もうすぐそこだ。」で始まり、その次の節において加賀と松宮が軽井沢の吉永邸を訪れる場面で、加賀が「相当寒いだろうな。覚悟しておいたほうがよさそうだ」と話しながら、コートを手に新幹線あさまに乗り込む様子で、11月だろうと予想出来ます。もちろん撮影時期に合わせたという訳ではないでしょう。冬のシーンを夏に撮影するといったことは度々あることですから、変更した必然性は、映画を観て判断するしかありません。ですが、同じ土井監督が演出を手掛けたテレビドラマ「赤い指」のラスト・シーンの日にちとの関係で言えば、映画での設定は辻褄が合わないと思います。
(2)冒頭シーンの描写
映画も原作と同様、青柳武明(中井貴一)が麒麟の翼像まで歩いて絶命するシーンから始まります。そして、原作では関係者の証言として語られる回想シーンが、映画ではフラッシュバックで挿入されていくのですが、6月13日の夜に運命が重なり合う3つの家族・登場人物の前史を原作と特別映像を基に再構成し、原作の描写と映画の演出の違いがあります。

日本橋と麒麟像

「麒麟の翼」では、この麒麟像の下に中原香織(新垣結衣)と共にやって来た加賀恭一郎(阿部寛)は、像を見上げて彼女にこう説明します。「これ知っていますか。麒麟です。本来は翼がないんです。でも、ここは日本の道のスタート地点。この翼は、ここから日本中に飛び立っていけるという願いを籠めて造られたそうです」。映画における「麒麟の翼」の意味も、基本的には原作で籠められた意味を基にしている筈です。その意味を観客に伝えるに当たって、監督は、原作には出て来ない演出を講じているように感じます。その1つが、ようやく像の下まで辿り着いた青柳が絶命する直前、ポケットから白い折り鶴を取り出し、欄干に手を掛けようとした瞬間、血で汚れた折り鶴が風に飛ばされる処理を行っていることです。これは、麒麟の翼像と共に折り鶴が、本作の謎の核心を象徴するとともに、彼のダイニングメッセージであることを誰かに伝えることを意味し、映画を観る観客にも原作以上にドラマチックにアピールする演出だと思います。問題は、このダイニングメッセージが従来のミステリー小説における犯人を特定するための手掛かりとして遺そうとしたものではなく、生き残る者に対して、これから新しい人生への一歩を踏み出して欲しいと願うメッセージであることです。特別映像にクレジットされる「人は最後に、何を願うのか」ですが、原作における「きりんのつばさ」というタイトルの意味は、これだけに留まるものではないでしょう。

『麒麟の翼』キャスト

  • 加賀恭一郎 - 阿部寛
  • 中原香織 - 新垣結衣
  • 松宮脩平 - 溝端淳平
  • 青柳悠人 - 松坂桃李
  • 吉永友之 - 菅田将暉
  • 杉野達也 - 山﨑賢人
  • 横田省吾 - 柄本時生
  • 青柳遥香 - 竹富聖花
  • 青柳史子 - 相築あきこ
  • 黒沢翔太 - 聖也
  • 安田巡査 - 中村靖日
  • 藤江刑事 - 緋田康人
  • 青山亜美 - 黒木メイサ(友情出演)
  • 加賀隆正 - 山崎努(特別出演)
  • 八島冬樹 - 三浦貴大
  • 糸川肇 - 劇団ひとり
  • 吉永美重子 - 秋山菜津子
  • 小竹由紀夫 - 鶴見辰吾
  • 岩井記者 - 志賀廣太郎
  • 小林 - 松重豊
  • 石垣刑事課長 - 北見敏之
  • 金森登紀子 - 田中麗奈
  • 青柳武明 - 中井貴一

『麒麟の翼』スタッフ

  • 原作 - 東野圭吾『麒麟の翼』(講談社刊)
  • 監督 - 土井裕泰
  • 脚本 - 櫻井武晴
  • 音楽 - 菅野祐悟
  • 主題歌 - JUJU「sign」(作詞:牧穂エミ/作曲:川口大輔/編曲:松浦晃久)(ソニー・ミュージック アソシエイテッドレコーズ)
  • エグゼクティブプロデューサー - 濱名一哉
  • プロデューサー - 那須田淳、伊與田英徳、進藤淳一
  • 撮影 - 山本英夫
  • 美術 - 金勝浩一
  • 照明 - 小野晃
  • 録音 - 武進
  • 編集 - 穂垣順之助
  • 音響効果 - 谷口広紀
  • 助監督 - 杉山泰一
  • 記録 - 鈴木一美
  • 製作担当 - 横原誠
  • ラインプロデューサー - 橋本靖
  • 音楽プロデュースエディット - 志田博英
  • アソシエイトプロデューサー - 辻本珠子
  • 協力 - 名橋日本橋保存会、三井不動産株式会社、人形町商店街協同組合、甘酒横丁商店会
  • 制作会社 - フィルム フェイス
  • 製作 - 映画『麒麟の翼』製作委員会(TBSテレビ、東宝、レプロエンタテインメント、毎日放送、電通、講談社、中部日本放送、RKB毎日放送、茂田オフィス、北海道放送、TBSラジオ&コミュニケーションズ)
  • 配給 - 東宝
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